営業スタッフたちの営業効率を上げるために、担当している顧客に関連した情報などをWebクローラーで収集、提供するといった使い方をする企業は増えてきています。顧客がどういった新製品を出しているのか、どういった企業と提携したのか、顧客の競合企業はどういう動きをしているのか、このように顧客に関連した情報をチェックすることは営業やマーケティング活動においてはとても重要なものです。こうした活動は、結果を出している営業やマーケティングを担当するスタッフであれば、何気なく行っているものですが、しっかりとした業務として、すべてのスタッフに徹底しようとすると抜け漏れが発生しやすう上に、慣れていない人間が行うと想像以上に時間的なコストがかかってしまうという問題があります。そこでWebクローラーの導入を行い、指定した企業や業界に関連したニュースやプレスリリース、ホームページ上の記載などを収集したいとなるわけです。以前であれば、関連情報を集めるだけで良いという企業が多かったのですが、最近では内容の”品質”についてこだわる企業が増え始めています。そこで注目されているのがWebクローラー+AIです。ここでは、より良いものを抽出するためにWebクローラー+AIを導入するにあたって気を付けておきたい落とし穴とその対策についてご紹介していきます。
Webクローラーで集めた情報の中から最適な情報をAIで抽出。でも、売上は上がらないのはなぜ?
営業スタッフの人たちが、もっと営業活動に集中できるように支援するシステムを作って運用したい。こうした目的から顧客情報の関連ニュースなどの収集、提供といったものはスタートするわけですが、実際に運用してみると関連ニュースを提供してるものの現場スタッフからは「使えない」という評価を受けてしまい、しばらく経つと多くの現場スタッフが利用しない状態になるということはよく起こります。それを回避しようとして導入するのが「AI」ですが、現場のスタッフの満足度は上がるものの売上はまったく変わらないということが起きることがあります。その原因は「営業スタッフがほしい情報」と「営業活動に影響を及ぼす情報」にギャップがあるためです。
AIがチェックする”品質”の軸は「営業スタッフの満足度」ではなく「売上への影響度」
こうしたシステムを導入する企業では、営業を担当する人数は多い傾向にありますが、こうした規模の大きな組織においては統計的に利用者を考える必要があります。どの組織においては上位層の10~20%、中位の層の60~80%、下位層の10%~20%ほどにわかれます。この中でトップの結果を出し続ける、上位層の営業スタッフは、こうしたシステムの有無によって結果が左右されることはほとんどありません。最も影響を受けるのは、中位の層に位置する60~80%ほどの一般的な能力の営業スタッフであり、この層の底上げをするためにAIは考え続けることになります。しかし、中位層の営業スタッフの方たちは”一般的”であるため、チェックすべきポイントを誤ってしまうと問題が起こってしまいます。
多くのシステムでは、適切な情報を提示できたかを判断するのに「クリック率」や「閲覧時間」が利用されます。しかし、ここに落とし穴があります。中位層の人たちがクリックするもの、しっかりと閲覧するものの多くは、売上に役立つものではないためです。上位層は、多くの場合、目線や情報感度などがとても高いために、好きか嫌いかだけでなく、有益かどうかで情報収集を行います。しかし、中位層の多くの人たちは、目的に対する意識はそこまで高くありません。自分が好きか嫌いか、自分にとって快適かどうかで行動を行い傾向があり、そのためクリック率、閲覧時間の数値は、営業結果に対するインパクトと比例しません。ここをしっかりと把握せずに、ボリュームゾーンである中位層のクリック率や閲覧時間をもとに、適切かどうかをAIが判断し始めると「営業スタッフの満足度」は上がりますが、「売上」は全く上がっていかないという結果につながります。AIがチェックすべきなのはあくまで「売上への影響度」なのです。
売上に影響する因子を見つけるためのAI、売上の役立つパターンに合致する情報を抽出するためのAI。2つのAIを動かすことが成功のカギ
営業支援のシステムは”底上げ”が原則的な考え方になります。この時、底上げする対象に目が行きがちですが、重要なのは模範となる上位層です。この層が行っている行動を最大公約数的に標準化し、普及させることができれば”底上げ”は確実に成功します。まずは、上位層の行動の中から売上に影響する因子を組み合わせで探させるためにAIを稼働させます。そこで因子の組み合わせがわかってきたら、そのパターンに合致する情報を抽出する部分に、もうひとつAIを使っていきます。こうすることで投資をしっかりと結果につなげることができるようになります。
AIというと万能なもので、勝手に考えてくれるイメージを持たれがちですが、役割、目的を間違ってしまうと、どんなに学習しても結果が伸びていくことはありません。適切な目的、チェックすべきポイントを設定してあげることが重要になります。Webクローラーで収集してAIで適切なものを抽出する、そんなことを考えている方はこうした点を気をつけながらプロジェクトを進めていきましょう。